留学体験記 – 中川 雅貴さん

学科 / コース:人間文化学科 国際文化コース
留学先 / 期間:ラトビア大学(ラトビア) / 2014年9月~2015年3月

●いつごろから留学の準備を始めましたか。または意識しましたか。
ラトビアへの留学は、僕自身2度目の留学であり、1度目の1年間の韓国留学もラトビアへの留学の大きな決め手の一つとなりました。留学を決心したのは出発する4、5ヶ月前ですが、実際準備を始めたのはぎりぎりで、非常に焦った記憶があります・・・。でも、2度目の留学ということもあり、ラトビアでしたいことは割とはっきりと決めていたため、現地でも目標を定め、時間を有効に使うことが出来ました。

●なぜ留学したのですか。
韓国に留学した際、バルト三国の人に出会い、今まで知ることのなかった文化や言語、歴史などを実際に現地の人から聞くことにより、深い興味をもったことがきっかけです。最初は恥ずかしながらラトビアってどこだろう・・・って思っていました。でも、だからこそ興味が湧いて、調べていくうちに留学を視野に入れるようになりました。

●なぜ留学先にその大学を選びましたか。
ラトビア大学は神戸との姉妹都市でもある首都リガに位置しており、日本語専攻の学生がたくさんいます。僕は、ロシア語も勉強したかったので、ロシア語も多く話されているリガを選びたかったこと、また、ラトビアでの日本語教育に興味があったこと、以上の2点からラトビア大学を選びました。

●留学に向けてどのような勉強をしましたか。
語学の面では、英語は日常会話レベル、ロシア語はアルファベットが読める程度でした。ラトビアの若い人のほとんどは、流暢に英語を話すことが出来ます。英語を理解した上で留学したことより、ロシア語・ラトビア語の学習のアングルも広がり、歴史や宗教などの分野でも幅が広がったように思います。

●留学中、現地や他の留学生との交流はありましたか。
もともとリガは毎年観光都市ランキングでも上位に入る都市であり、僕の留学年はリガが欧州文化都市でもあったことから、多くの観光客で賑わっており、様々な国の人を見る機会が多かったです。現地の人は、ラトビア人とロシア人が多く、ほとんどの人がラトビア語・ロシア語、若い人は英語や他言語も話すことが出来ます。日本人留学生はほとんどおらず、僕を含めても3・4人でした。主にヨーロッパの人であるため、現地の人や留学生との関わりは深かったです。

●留学中の楽しかったエピソードを教えてください。
日本語に興味を持ってくれる人がラトビアにはたくさんいます。その反面、日本人が少ないため、日本語や日本の文化などを教えたり紹介したりするイベントには、毎回多くの人が参加してくれます。「ここの日本食はやっぱり日本と違うの?」とか、「日本のテクノロジーはすごいね~。」とか、そういった素朴な疑問や興味が、日本人の僕には嬉しくも新鮮であり、離れているからこそもっと伝えたい、という気持ちに繋がりました。

●留学中、困ったことはありましたか。
みなさんそうだと思いますが、やはり文化の違いですね・・・。初めの数週間は、慣れない文化と向き合う必要があるため、それを辛く思う人もいると思います。例えば、韓国ではおつまみに虫が出ることもあります。ラトビアでは、映画館で映画を観る時、笑ったり拍手したりします。それを全部受け入れる必要があります。韓国では、虫、食べましょう。ラトビアでは、映画館で思いっきり笑い、拍手しましょう。みんながしているなら、溶け込めばいいと思います。不思議と、数週間すれば慣れてくるので、帰国後、日本の映画館に行った時、あまりにも静かで逆カルチャーショックが起きたことを今でも覚えています。でも、法律はしっかり調べなければいけません。例えば、ラトビアでは、夜10時以降のお酒の販売、特別な許可のない限りバーなど以外の公共の場所でお酒を飲むことは法律で禁止されていますし、夜は反射板の装着も義務付けられています。知らずに行ってしますと法に触れることもありますので、留学前にしっかりと調べておくべきだと思います。

●留学前と後で自分自身での変化はありましたか。
僕の中で、ラトビアに対する知識がほとんど無い状態で留学へ行ったため、全てのことが新鮮で、白紙に色を塗っていく様な感覚を、身を持って経験しました。ヨーロッパでは、自分が外国人であるという自覚をより強くもつため、同時に日本人としてのアイデンティティーも強くもつことになりました。ラトビアでは、いつも中国人だと思われていました。向こうでは、日本はあくまでもアジアというくくりであり、アジアの一国という認識を持つ人が少なくないからです。例えば、僕が留学前に「ラトビアとリトアニアはどう違うの?」という質問を受けても答えることが出来なかったと思います。でも、今なら全く異なった文化・歴史であることも、ヨーロッパというくくりで置き換えることもありません。現地に住み、肌で実感することにより、その国だけでなく、他国のことも尊重することが出来るようになると僕は思います。日本人で、日本の文化を紹介する課程で、逆に多文化を学びアングルが広がったことが、何より僕自身を大きく成長させてくれたように感じます。

●留学で得たものは何ですか。
語学に対する考えが全く異なっているため、とても刺激になりました。ラトビアでは、言語学習は勉強というよりむしろ、コミュニケーションのツールとしての認識が強いため、多くの人が少なくとも3ヵ国の言語を話すことができ、改めて言語に対しての考えを見直すきっかけにもなりました。また、文化の違いも大きいため、僕にとっては全てが新鮮でした。例えば、礼をしても不思議な目で見られますし、目上の人の前で足を組んでも失礼ではありません。そういった些細なことも敏感に感じることが出来るので、日本を外から見ることができ、多くのことを得ることが出来ました。

●留学での経験が生活にどのように影響していますか。
留学を通して、数えきれない程のことを学びました。僕の場合は特に、英語が話せるようになったことや友達が世界中に出来た事実よりむしろ、語学や文化に対して広い視野で見ることが出来るようになったことを強く実感しました。もともと英語は勉強というイメージが強かったので、自然と少なからず嫌気がさしていました。しかし、英語は言語のツールだということを再認識したことにより、英語に対する嫌気もなくなり、そこから理解できる文化にも興味を持つようになりました。帰国後も、語学の勉強(勉強といっていいかわかりませんが・・・)を続け、行く前と後では、自分でも実感するほど違ったアングルから物事を見られるようになりました。

●これから留学を考えている人へのメッセージをお願いします。
みなさん留学をする動機は様々あると思います。英語を勉強したい、海外の日本語教育に興味がある、世界中に友達を作りたい、人それぞれです。僕は、全く英語を理解することが出来ない状態で、ただかっこいいから、という理由で留学を決めました。でも、それが留学に対するファーストステップであり、自分のモチベーションに繋がったことも事実です。英語が話せる自分、外国人とコミュニケーションをとっている姿、そういったことを想像するだけで、僕は自然と英語に対して寛容になっていきました。ただ、それだけです。本当にシンプルでした。でも、ただ一つ、これは正しくないと思えることは、留学をしたから英語が話せるようになる、友達が作れるようになる、というスキルの面での考えです。留学はあくまでも留学です。住めば違ったアングルから様々なことを見ることが出来るようになります。しかし、ずっと日本語で話したり、ただ授業に出るだけだったりすると、それはただ環境が外国になっただけです。言ってしまえば日本でも出来ることだと思います。人それぞれ勉強法・コミュニケーション方法はありますが、僕からアドバイスとして、本当に留学を濃いものにしたいなら、アウトゴーイングになることだと思います。もっと現地の人、留学生とご飯に行ってください。現地の人の家に遊びに行ってください。現地の文化に触れ、決してメリット・デメリットを考えないこと、頭をフラットにし、目も耳も口も心も全てオープンにすること、これは僕の中で一番大切なことだと考えています。
僕の例になりますが、僕はロシア語も話されるラトビアに留学する時、正直、ロシア語の方が将来使えそうだし、ラトビア語の勉強を疎かにしていました。これは、僕が後悔したことの一つです。僕が住んでいたのはラトビアです。母国語はラトビア語です。現地の文化も全く知らず、最初の数か月ロシア語に焦点を当てていたこと、それはそれで勉強になりましたが、あの時ラトビア語をすれば良かった、と今でも思っています。僕の中でそれは、日本で英語を勉強することとあまり変わりがないことに気付いたからです。家族や学校の協力もあり、せっかくそこに住む機会を与えられたなら、もっと現地でしか出来ないことをするべきです。きっと、それは言語以外でも同じことが言えると思います。留学で目標が明確に決まっている人はあまり多くありません。僕もその一人だったので、それは自然なことだと思います。ただ現地でしか出来ないこと、その国の人、文化、言語を尊重し毎日の生活を送れば、きっと素晴らしい留学になると思います。

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