留学体験記 – 粟飯原 瑞紀さん

学科 / コース:社会総合科学科 国際教養コース
留学先 / 期間:ルンド大学(スウェーデン) / 2019年8月~2020年3月

●いつごろから留学の準備を始めましたか。または意識しましたか。
高校生の頃から大学生になったら長期留学に行きたいという思いがありました。大学に入学してからは総合科学実践プロジェクトを利用して台湾とスペインへ短期留学に行きました。英語圏ではない2ヵ国への留学だったこともありますが、たった2、3週間では語学力の向上は望めないと実感し、2年生の秋頃からさらに強く長期留学に挑戦したいと思うようになったので留学の準備を始めました。

●なぜ留学先にその大学を選びましたか。
アメリカやカナダなどの定番の国々ではなく、国境を越えて人や文化、言語が混ざり合うヨーロッパで留学したいという思いを留学担当の先生に伝え、相談しました。お勧めされた大学のパンフレットを見たり、過去にそれらの大学へ留学していた先輩方にお話しを聞いたり、他大学の学生の留学体験記を拝見したりしました。世界的に見てトップレベルの教育制度が整っており、母国語を英語としない国々の中で英語の普及率が一番高く、男女平等社会が実現している国、スウェーデンに魅力を感じたとともに世界最高峰の教育を体験したいと強く思ったためルンド大学を留学先として選びました。

●留学に向けてどのような勉強をしましたか。
毎日付けていた日記を英語で書くこと、海外のニュースサイト(Time, Nature, CNNなど)で記事を読んだり、レポート映像を見たりしたこと、YouTube で海外在住の方の日常動画や英会話レッスン動画を見たことなどを通して実践的な英語に触れる機会を増やしながら勉強しました。留学前の事前知識としてスウェーデンのことを知るために本を読んだりもしました。

●留学中、現地や他の留学生と、どのような交流はありましたか。
毎週水曜日の午後5時から7時までの2時間、大学内で Language Café と言って世界各国の言語を話すイベントがありました。話したい言語の国旗が置いてあるテーブルに座り、集まった人同士でコーヒーやスナックを嗜みながら(Fika:スウェーデンの伝統文化)その言語で会話をするといったものです。ルンド大生だけでなく、地域の人も自由に参加できるので幅広い年齢層の方々とお話しすることが出来ました。日本語ブースでは、ルンド大学の日本語学科の学生と会話しながら徳島の魅力を伝えたり、スウェーデンの文化や観光スポット、スウェーデン語などを教えてもらったりしました。日本の方言に興味を持った学生に阿波弁を教え、彼が阿波弁を話していたことがとても印象に残っています。Language Café で出会った日本語を勉強しながら働いている女性のホームパーティーやクリスマスパーティーに招待してもらい、彼女の学生時代の同級生や親戚などの年上の方々との交流もありました。また、Facebook で公開されているイベントがたくさんあったので、授業後や土日に参加しました。シェイクスピアの「ハムレット」の舞台になったデンマークのクロンボー城に行ったり、ハロウィンの時期にはパンプキンカービングをしたり、フルーツ狩りに行ったりしました。

●留学中の楽しかったエピソードを教えてください。
寮に入って間もない頃に親睦会を兼ねてそれぞれ自分の国の料理を作ってコリドーメイトたちと一緒に食べる International Dinner を開催しました。ヴィーガンのコリドーメイトもいたので肉を使わずに野菜や豆腐、しらたき、きのこなどですき焼きを作りました。他にはスウェーデン、アイルランド、トルコ、オランダ、アメリカ、台湾の料理を楽しみました(料理名は忘れてしまいましたが)。お互いに材料や作り方、完成した料理の説明をしたり、それぞれの国の「いただきます」の挨拶を披露したりしました。私と台湾人の学生でみんなにお箸の使い方を説明し、全員お箸を使って食べたことも印象に残っています。この International Dinner がなければ一度も口にすることがなかったであろう料理を経験することが出来たので楽しい思い出になりました。また、授業がない日や冬休みを利用してヨーロッパ中を旅行しました。格安航空券であれば1万円で往復分を予約することができる上にバスや電車でも国境を越えて移動できるのが陸続きのヨーロッパの強みです。友人と航空券が安い日程で1回の旅行で数ヵ国賢く安く回れるプランを立てて旅行しました。留学期間中に14ヵ国を旅行しました。世界遺産や有名な観光スポットを巡ったことはもちろん、郷土料理を食べたりスーパーに寄ってお土産を買ったり、バスやトラムから街の風景を眺めたりしたことがとても楽しかったです。

●留学中、困ったことはありましたか。
私が暮らしていた学生寮はキッチンとシャワーが共同でした。使ったまな板、包丁、フライパンやお皿などをそのままキッチンに放置している学生がほとんどで、フライパンを使いたくても使えないということがよくありました。また金曜日や土曜日の夜に外部から友人たちを招き入れて共同キッチンでパーティーを開催していました。かなりの音量の音楽をかけてスナックやお酒、ミニゲームを楽しむのですが、レポートや課題をするために私を含めてパーティーに参加しなかった学生もいました。朝方まで続いていることもよくあり、なかなか課題に集中できなかったり眠れなかったりしました。翌朝のキッチンはグラスやスナックの袋、トランプなどが散乱していました。共同で使うキッチンなので、コリドーメイトを思いやった行動をして欲しかったという点で困っていました。
さらにスウェーデンは季節によって日照時間が全く異なります。夏は朝5時頃から21時過ぎ、冬は9時頃から15時頃までで、特に12月は日本では考えられないほどの日の短さでした。ルンドについてすぐの頃、日差しは強かったもののカラッとしていて21時を過ぎても空は明るく、とても過ごしやすい気候でした。しかし冬が近づくにつれて曇天が続き太陽を見ることも珍しく、15時を過ぎると空は暗くなり始めることから、気分が沈んで軽い鬱のような状況になったこともありました。日本との日照時間の違いになかなか慣れることができず生活リズム的にも精神的にも困りましたが、この経験から陽の光のありがたさを実感することができました。

●留学前と後で自分自身での変化はありましたか。
留学前は何をするにも失敗を恐れて後先を考えて行動したり、わからないことがあればすぐに携帯で調べたりしていました。異国の地で初めての一人暮らしだったのでとにかく不安でした。初めはものを買い揃えるにも苦労しました。値札や品物の表示はスウェーデン語で翻訳しても何なのかわからなかったり、見たことがない物がたくさんあって買いたいものを買えなかったり、ということがよくありました。店員さんにどんなものか、どんな料理に使えるか、買いたいものがどこに置いてあるかなど、わからないことがあれば聞くように心がけました。また旅行中は道やどのバスに乗ればいいか分からないことがほとんどです。そんな時に携帯で調べるのは時間がかかるし、絶対に正しいとは言えません。人に聞く方がネットで調べるよりも早くて正しい情報を得られる上に目的地周辺の穴場の観光スポットを教えてもらえることだってあります。自分1人で解決しようとせずに誰かに頼ることも大切だと気付くことができました。

●留学で得たものは何ですか。
留学で得たことのまず一つ目は語学力です。英語を話さないことには何も始まらないので初めは片言でもとにかく話しました。ネイティブはこんな言い回しをよく使うんだ、日本人に馴染みのある単語でもこんな意味で使われているんだ、などと会話の中で学ぶことができます。そしてその新しく学んだ言い回しをすぐに使うように意識しました。日本語でも若者ことばや省略ことばがあるように英語にもそれらがありますが、教科書では学ぶことはできません。実際に英語が使われる土地で生活することによって得られるものだと思います。
二つ目は人種、国境を越えた志の高い友人に出会えたことです。ほとんどの学生が自ら留学を希望しているので、勉強やアクティビティに対してとても意欲的です。また、一度社会人を経験していたり、家庭を持っていたりしながら、もう一度大学に入学して専門分野を学ぶ人もたくさんいました。日本ではなかなかそのような人に出会う機会がありません。年齢や社会的地位などに縛られず、生涯を通して学び続ける姿勢がとても印象的でした。留学を終えてそれぞれの国に戻った現在でも連絡を取り合っています。彼らとは今後も良い関係が続くと思いますし、またいつかどこかで会える日を楽しみにしています。
三つ目はやればできるという考えです。初めての1人暮らしも自分から話しかけることもグループワークで発言してみることも全てやってみればできるものです。留学を経験するまでは初めの一歩を踏み出すまでに人一倍時間がかかっていました。失敗したらどうしよう、人からどう思われるのか、ネガティブな考えばかりが頭を巡っていました。しかし、そうやって考えている時間が勿体ないと気付きました。考える時間があるのならまず行動に移す、これがひとつ成長するための近道であると気付きました。やってみなければできることもできないですし。失敗したら何が悪かったのか反省して改善すれば次はきっとうまくいくはずです。気軽にとりあえずやってみるくらいの感覚で何事もチャレンジすることが大切で、自分の可能性を広げることができるということを留学を通じて得ることができました。

●留学での経験が生活にどのように影響しますか又はしていますか。
留学を通して想像できないような困難や今回で言えばコロナウイルスの感染拡大による緊急帰国などのトラブルを経験してきました。語学力に自信がなかった私が乗り越えることができたので、大抵のことは出来るという度胸がつきました。留学前までは街で困った外国人を見かけても助けられる自信がなかったので話しかけることは出来ませんでした。これからは私が留学中にルンドの街の人や旅行先で出会った人に助けられてもらったように進んで話しかけて助けられたらいいなと思います。

●これから留学を考えている人へのメッセージをお願いします。
私は約2週間の短期留学を2度経験し、海外留学という長年の願いが叶いました。しかし2週間のプログラムでは正直に言うと観光に近いことしか経験できません。このまま4年で卒業したら長期留学すれば良かったと後悔する自分が想像できました。また留学説明会や留学報告会などに参加し、留学を終えられた先輩方のいきいきとした表情や体験談などから私も長期留学をしたい!とさらに強く思いました。ある先輩が報告会でおっしゃっていた「やらない後悔よりもやってからの後悔を」という言葉に強く感銘を受けて長期留学への挑戦を決意しました。留学を振り返ってみると、もちろん楽しいことばかりではありませんし、文化の違いによるストレスや自分のレベルの低さへの失望、上の質問で答えたような困ったことなど多くの困難に立ち向かっていかなければなりません。留学に挑戦していなければこれらの困難も経験できていなかったですし、乗り越えた自分に対して大きな自信を持つことができました。どんなきっかけでも留学に興味を持たれたなら、挑戦するべきだと私は思います。日本という小さな国の中だけで4年間の大学生活を終えてしまうのは非常に勿体ないことです。世界各国から集まった学生と共に励んだグループワークはとても刺激的でした。批判的な視点から物事を考えることや他人からどう思われようと自分の意見に自信を持つことの大切さを実感しました。3時間の講義を全てグループワークに費やす先生だっていました。学生から学ぼうという先生の姿勢がとても印象的です。そんな “International” なグループワークを徳島大学でできますか?自分自身を大きく変える、成長させるチャンスだと思います。私の留学体験記に目を通していただいた方の背中を少しでも押すことができれば幸いです。

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