留学体験記 – 玉木 絢子さん

学科 / コース:社会創生学科 公共政策コース
留学先 / 期間:武漢大学(中国) / 2016年9月~2017年7月

 私は2016年9月から2017年7月までの11か月、中国の武漢大学に留学しました。武漢は湖北省東部に位置する省都であり、中国中部における経済や貿易の中心都市です。中国大陸を東西に流れる中国最大の河川・長江は武漢のシンボルであり、長江を中心に賑やかな町が広がっています。私の通った武漢大学は、広大で美しいキャンパスの中に約5万人の学生が学ぶ、歴史ある大学です。

 武漢大学には留学生も多く、私は、アフリカ・ヨーロッパ・アジアなど、国際色豊かなクラスメイトと共に中国語を学びました。授業では、多くの生徒が活発に発言していたので最初は戸惑いましたが、私も徐々にその雰囲気に慣れて積極的に授業に臨むことができました。その中で、国籍や文化、母語、宗教を異にする者同士であっても、互いを理解しようとする気持ちがあれば仲良くなれるということに気づいたのは大きな自信となりました。また、世界各地の友人ができたことで、様々な国の人の暮らしや文化、ものの考え方を知り、世界の国々をより身近に感じられるようになったと思います。

 私は中国語をあまり話せないまま中国に行ったため、最初は買い物をするのでさえ一苦労でした。言葉が通じない環境に身を置くのは初めてのことで、生活をする上で言語がいかに重要な役割を果たしているかということを身に染みて感じました。そこで、常に電子辞書とメモ帳を手にして、分からない単語があればその都度辞書を引き、中国人が何を言っているかわからなければ言ったことを書き記してもらうなどの工夫をしました。そんな私に対して多くの中国人が温かく接してくれ、その甲斐もあって私の中国語は少しずつ上達していきました。

 中国には、私を日本人だと知ると熱烈に歓迎してくれる人もいる一方で、やはり日本のことをよく思わない人もいます。私はタクシーに乗ると、よく日本嫌いのおじさんに出会いました。そういう人に対して、私は特に日本を好きになってもらおうとは思いませんが、日本人だからという理由で私個人に対しても嫌悪感を持たれるのは、悲しいことです。だからそういう時、私は敢えて積極的に話しかけて相手の話を聞くようにしました。日本人と中国人との間にある偏見や先入観を取り払い、個人と個人とで話をしたいと思ったからです。こういう点について言えば、私はかなりポジティブになり、肝も据わったと思います。

 中国人との交流の中で、意外だったことは、中国の若者が日本のアニメや映画についてたいへん詳しいことでした。アニメをきっかけに独学で日本語を学んだという人も少なくありません。中国はGoogleが使えないなど、ネット規制が厳しく国外の情報はあまり入ってこないのだろうと勝手なイメージを抱いていただけに、若者を中心に国外の文化が盛んに受容されていることは驚きでした。

 そうした背景には、インターネットが中国人の生活の深いところにまで浸透しているという事実があると思います。中国の都市部では、基本的にどんな場所でもスマホ一つで支払いを済ませることができるほど、電子決済サービスが普及しています。ネットショッピングや出前、タクシーの手配、公共自転車など、電子決済を用いた多くのサービスがあり、これらは今や中国人の生活にとって欠かせない存在となっています。私自身、中国で電子決済をよく使い、外出する時に現金を持ち歩かないことも多々ありました。私の生活していた武漢は、中国でも二番目に電子決済の利用率が高く、将来的には“キャッシュレスシティ(無現金都市)”の実現を目指しているそうです。中国は日本以上にスマホに依存した社会であるといっても過言ではありません。

 また、私は授業のない土日や長期休暇を利用して、中国各地を旅行しました。行く先々でその土地その土地の伝統的な中華料理を味わったり、壮大な自然や歴史的建造物を見たりと、大変有意義な時間を過ごしました。

 旅行先での人々との出会いも、留学生活の中で特に印象深いものとなりました。私は中国の旧正月・春節を雲南省の農村地帯にある中国人のお宅で4日間過ごさせてもらったのですが、実はこの中国人とも旅行先で出会いました。その方のおかげで、私は農村ならではの伝統的な春節を満喫することができました。出会ったばかりの日本人にご飯をご馳走し、「春節もおいで」と言ってくれるその中国人の懐の深さに心打たれる思いがしました。

 アジア一の大国・中国は、私に多くの驚きと発見をもたらしてくれました。中国で過ごした11か月間は、決して上手くいくことばかりでありませんでしたが、私は人間的にひと回り成長したように思います。そして何よりたくさんの人に出会えたことで、充実した留学生活を送ることができました。中国の人々、その他留学中に関わった多くの人に感謝の気持ちでいっぱいです。中国留学での数々の経験を、今後の人生に活かしていきたいと思います。

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