学科 / コース:社会総合科学科 国際教養コース
留学先 / 期間:開南大学(台湾) / 2024年4月~2025年3月
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●いつごろから留学の準備を始めましたか。または意識しましたか。
もともと海外留学にはあまり関心がありませんでしたが、開南大学での夏季の短期留学を経て、長期留学を本格的に検討するようになりました。思い立ったときにはすでに長期留学生の募集は締め切られており、次回の応募を待とうにも、成績がプログラムの応募条件を満たしていなかったため、正規の形での留学は難しい状況でした。そこで先生に相談し、1年間休学して開南大学の語学学校に私費留学することを決めました。
手続きは語学学校の担当者とメールでやり取りしながら、12月から2月にかけてゆっくりと進めました。やろうと思えばもっとスピーディーに進めることもできましたが、自分のペースでじっくり準備することを選びました。
●なぜ留学先にその大学(またはプログラム)を選びましたか。
当時はあまり新しい環境にチャレンジしたくなかったので、一度短期留学で訪れた経験がある開南大学を選びました。大学周辺の環境や寮での生活について事前に知っているうえ、困った時は以前お世話になった先生を頼ることができたため、非常に安心感がありました。
●留学に向けてどのような勉強をしましたか。
教科書の文法の項目を軽く復習した程度で、特にこれといった準備をせずに留学に臨みました。今振り返ると、少なくとも民間信仰に関する基礎的な知識くらいは事前に身につけておくべきだったと感じています。
●留学中、現地の方や他の留学生と、どのような交流がありましたか。
担任の先生とはとても親しくなり、ご飯に行ったり、一緒に旅行に行ったり、先生が所属している団体の宗教行事を見学/参加させていただくなど、貴重な経験を沢山させてもらいました。他にも、クラスメイトの家にお邪魔し、ご家族の方と一緒に食卓を囲ませてもらったり、現地の大学、高校の歴史の先生方が主催するフィールドワークに参加させていただいたり、現地の方々とは楽しく充実した時間を過ごせたように思います。
祭りの際には、訪れた先々で現地の方々のご厚意に触れ、徒歩巡礼では道中で知り合った方と語らいながら夜通し歩くという印象深い経験もありました。台湾語が話せたらもっと密なコミュニケーションが取れたのかなぁと今になって思っています。
●留学中の楽しかったエピソードを教えてください。
留学中はとにかく廟会(台湾のお祭り)に足を運びました。特に印象深かった廟会&エピソードを簡単に二つ紹介します。
① 大甲媽祖巡礼(4月)
海の神様である媽祖様のための巡礼です。信者の方々は媽祖様の神像を乗せた神輿と共に340㎞の道のりを歩き ます。私が見た中では最も規模が大きい廟会であり、非常に多くの人々が巡礼の列に加わっていました。当時、私は台湾に来てまだ一週間ほどでしたが、YouTubeライブで見た祭りの様子が忘れられず、寝袋だけを持って巡礼の3日目から飛び入りで参加しました。バスで現地に着いたものの、なかなか巡礼隊を見つけられず、橋の上でスマホ片手に立ち尽くしていたところ、何かを察した地元住民の方が声をかけてくださり、巡礼隊がいる場所まで案内してくれたのがとても印象的でした。その後は巡礼隊に合流し、信者の皆さんと行動を共にしました。祭りの期間限定で巡礼ルート上での野宿が許されていたので、皆さんはそれぞれのペースで休憩を取ったり、先回りをしたりと自由に動いていました。初日に駅の改札口前で寝たこと、深夜2時頃に目を覚まして、ご厚意でいただいたひじき入りの平たいパンを食べながら、どこかワクワクした気持ちで神輿を追って人がまばらな夜道を歩いたこと、ふんわりとした中国語で信者の皆さんと交流したこと、そのすべてが強く心に残っています。この巡礼に参加した6日間が、私が廟会に強い関心を持つようになった大きなきっかけとなりました。
➁ 米街廣安宮送天師(12月)
台南の米街廣安宮が主催する巡礼です。ローカルな廟会は情報が入り辛く、開催時間や場所も行ってみるまで読めないのが特徴です。台南で大規模な廟会があるという噂を聞きつけ、当日出先不明の巡礼路線図だけを頼りに、早朝バスに乗って現地に向かいました。ところが、巡礼隊に合流して間もなく、のどかな田園風景の中で、伝統音楽を奏でながら踊るサンタクロースたちや、牛の張りぼてを被って舞う人々、見覚えのない廟の名前が書かれた神輿を目にして、「もしかして来る場所を間違えたのでは」と不安に襲われました。そして、巡礼隊が路線図から大きく外れたあたりでその不安は確信へと変わり、早朝のただっぴろい道で去っていく謎の巡礼隊を見送りながら、一人唖然としていました。失意のまま宿に引き返そうとしたとき、進行方向から爆竹の音が聞こえてきました。一縷の希望を抱いて音のする方へ向かうと、そこには「米街廣安宮」の文字が書かれた巡礼隊と、伝統音楽に合わせて踊る神様の着ぐるみの姿があり、思わず感動したのを覚えています。
その後、突然バスで移動し始めた巡礼隊を追って、SNSで得られる断片的な情報を頼りに自転車で各地を駆け回ったこと、すべてが終わったあと、宿の近くにある廟の管理人から「この祭りは来週が本番だから」と言われ、来週分の巡礼路線図をいただいたこと、お財布と相談しながら泣く泣く来週分の宿も予約したことも含めて、今ではすべてが良い思い出です。(本番の日は台南市内で絶え間なく爆竹と伝統音楽が鳴り響き、各地の廟からやってきた神輿行列が道路を埋め尽くしていました)
●留学中、困ったことはありましたか。
今後留学に行くであろう方のために、私が経験したトラブルとその解決法を書き残しておきます。
① もし病気になったら
夏頃に、謎の病気に罹りました。中国語の練習がてら現地の病院を受診するのも一つの経験だとは思いましたが、そのときの私は一日中寝込んでおり、それどころではありませんでした。そんなときに頼りになるのが、クレジットカードに付帯する海外旅行保険です。私はエポスカードを持っていたため、24時間対応の台湾サポートセンターに連絡し、通訳付きで受診できる病院を紹介してもらうことができました。実際には病院に行く前に回復したのですが、治療費が全額補償される制度もあり、非常に心強いサービスだと感じました。海外滞在中は、万が一に備えてサポートの手厚いクレジットカードを選んでおくことをおすすめします。また、解熱剤やビタミン剤などの常備薬を日本から持って行くと、いざというとき安心です。
➁ SIMカードが買えない〜語学留学〜
台湾でスマホのモバイル通信を利用するには、定期的に現地の携帯会社でSIMカードを購入する必要があります。SIMカード購入に必要な身分書は最初のうちはパスポートと語学留学ビザだけでいいのですが、滞在期間が長くなると居留証(ARC)と呼ばれるカードタイプの身分証の提出が求められるようになります。ところが、語学学校に通う学生にはカードの現物は発行されず、入手できるのはPDF版の電子居留証のみです。どこの携帯ショップに行っても基本的に現物を要求されたので、SIMカード購入にはかなり苦労しました。このような場合は、ひたすら複数の店舗を回り、「電子版の居留証でも対応してもらえるか」を確認するしかありません。私の経験では、大型店舗ほど柔軟に対応してくれる傾向がありました。皆さんの健闘を祈ります。
●留学前と後で自分自身での変化はありましたか。
留学を通して、「まずは何にでもチャレンジしてみよう」と思えるようになりました。留学前の私は、目の前のチャンスに対して何かと理由をつけて挑戦を避けがちでした。しかし、渡航から一週間も経たないうちに、思い切って大甲媽祖の巡礼に飛び込んでみたことをきっかけに、「とりあえずやってみる」という姿勢が身につきました。もちろん、挑戦して失敗することもありますが、実際に行動して得た経験から学べることは本当に多く、結果として自分の世界が広がったと感じています。これからもやらない後悔よりやった後悔を信条に、積極的に行動していきたいと思います。
●留学で得たものは何ですか。
行動力と一生の趣味、そして少しの語学力と体力を得ました。台湾の民間信仰文化、特に廟会との出会いは、確実に私の人生を豊かにしてくれました。これからも定期的に台湾を訪れ、廟会を追いかけ続けたいと思っていますし、日本で台湾の民間信仰文化に触れられる場所/機会があれば是非とも足を運びたいです。
●留学での経験が生活にどのように影響しますか又はしていますか。
まず、困っている人に優しくしようと思えるようになりました。滞在中、本当にたくさんの方々にお世話になりましたし、廟会や日常生活の中で、人々がごく自然に助け合っている光景を何度も目にしました。その経験から、今では中国語圏の方が困っているのを見かけたら、できる限り自分から声をかけるようにしています。私が受けた優しさを今度は誰かに返すことで、少しでも恩返しできればと思っています。
次に、先述した通り、留学を経て以前よりずっと活動的になりました。というのも、こちらが動かなければ何も得られないし、たくさん動いていれば自然とチャンスが巡ってくると気づいたからです。留学中には、以前の私にとっては無謀とも思えるような挑戦をいくつも経験しましたが、それらを通じて挑戦に対する心理的なハードルがぐっと下がったように感じます。これは、私自身にとって最も大きな変化のひとつです。
また、巡礼型の廟会に何度も参加する中で自然と体力もつき、帰国後は徒歩移動がすっかり習慣になりました。巡礼型の廟会には今後も参加するつもりなので、継続的な体力づくりを心掛けていきたいです。
●これから留学を考えている人へのメッセージをお願いします。
留学しようか悩んでる/いまいち踏み切れない皆さん。めんどくさがり屋でつい最近まで留学行かなくても別にいいかなって思ってた私ですが、留学に行って本当に良かったと思っています。無責任なことを言うようですが、迷ったらとりあえず飛び込んで、あとはその場で自分の無計画さを笑いながら悔やめば大丈夫です(笑)。何もしないで後から後悔するよりはやってみて頭を抱えるくらいがちょうどいいです。
もう留学に行くことが決まっている皆さん。行き当たりばったりの留学も楽しいですが、可能なら少しだけ学びたいと思っている分野について知識を入れておくのをお勧めします。また、一人旅も楽しいですが、現地の人とたくさん話すことを忘れずに。話すのが1番の練習になります。そして最後に、台湾に行くならぜひ廟会に行って、台湾の民間信仰文化が持つ凄まじい熱量を肌で感じてみてください!